青空の唄 6

*フレユリで現代設定
*ユーリ乙女思考注意





まだユーリもフレンも中学生頃。
二人の間で交わされた約束があった。

『僕の夢?』
『うん。あ、真面目な話だから』
『そうだなぁ…人を助ける仕事に就きたいな』
『人を助ける…なんか漠然としてないか?』
『僕の力が必要とされている所で、精一杯がんばれればいいんだ』
『ふーん』

ユーリは、眉間に皺を寄せて曖昧な返事をした。
その表情に苦笑して、フレンは、

『ユーリの夢は?』
『私?私はもちろん、料理ができればいい』
『ユーリの作る料理はおいしいもんね』
『じゃあ、フレン専属のソムリエになってやる』
『それいいなぁ…ユーリの料理が毎日食べられたら幸せ』

一緒にいるのが当たり前だった頃。
性別なんて関係ない。恋愛なんて考えた事もない。
純粋な、好意として、言葉が向けられていた頃。

二人は、約束した。
どんな将来が待っていても、離れてしまっても、一緒にいようと。

『僕は、法律の道に進みたい』
『また、お前らしいな』
『…応援、してくれるかな?』
『当たり前!誰よりもフレンのこと応援してる』

高校入学の新入生代表演説の後。
不安げにユーリに尋ねたフレンの肩をぽんと叩き、ユーリは笑った。
眩しいものを見るように。自分の事のように嬉しそうに。

(ユーリのあの笑顔が、僕の背中を押してくれていたんだ)



薄暗い保健室の中、ユーリは、フレンとジュディスの会話がぼんやりと意識を覚醒させていくのを感じた。
二人には気付かれていないようだ。ユーリは、無意識のうちに息を殺して、二人の会話に耳を傾ける。

「僕はただ、ユーリと一緒にいたいんです」

――そんなの、自分だって同じだ。
ユーリは心の中で呟いて。でも、それが叶わないんじゃないかという恐怖が脳内を過る。
怖い、恐い。フレンと一緒にいたいのに。
何が恐怖なのだろうか。離れてしまうこと?病気が治らないこと?
自問自答しても、堂々巡りに陥ってしまう。

恐怖、それは。
(フレンが…)
そこから先が出てこない。胸に何かが蓋をしていて。それ以上先に進ませてくれない。
涙が、零れる。

「…ユーリ?」

はっと声がする方に視線を送ると、フレンが驚きに目を見張っていた。

「ぁ…」
「どうしたの!?どこか痛む?」

違うと首を横に振ろうにも、何故だかフレンから視線を外せなくて。
ユーリの目から零れ落ちたもう一筋の涙に、フレンは驚きを心配の顔に変えてそっとそれを掬う。
やさしい手。ずっと前から変わらない。
フレンの指が恐怖から救ってくれるのも、もう何度目だろう。
再び訪れたまどろみは、今度こそ抗えそうになかった。




結局、終礼まで保健室でお世話になったユーリは、ジュディスに挨拶をしてフレンが教室にまだ居るかを確認しに行くことにした。
(あー…もしかして生徒会室かなぁ…)
距離的には教室の方が近いが、生徒会室にいる可能性の方が高いかもしれない。
仕方がない、ととりあえず教室を覗いて見るべく扉に手をかけて、しかし中から聞こえてきた声に思わずその手を止めた。

「ねー聞いた?フレン君、法学部の推薦蹴って、医学部行くんだってさ」
「さすが、文系も理系もできる人は違うわよね」

嫌味などでは一切なく、恋する少女たちの会話のようだ。
しかしそれ以上に、話されている内容がフレンだということに思わず息をのむ。

「でも、高校の推薦作文には、将来は法律家になります!って宣言してたんだって」
「かっこいいなぁフレン君。でもじゃあ医学部ってなんでだろ?」
「あーあれじゃない?隣のクラスの、ローウェルさん」

突然上がった名前に、思わず扉から手を放す。

「フレン君て、ローウェルさんと幼馴染らしいよ。で、ローウェルさんが身体悪いって言うし」
「それで?何それ、少女マンガじゃないんだし」
「でもフレン君ならやりそうじゃない?あーいいな、ローウェルさん。私もフレン君にそんな風に想われてみたーい!」
「そもそもローウェルさんがいなかったら、フレン君は法律家の道に行ってたわけでしょ?それもどうかと思うけど」

ずきん、と言葉が胸に刺さった。
(フレンが、夢を諦めたのは、私のせい…?)
ユーリはふらりと扉から一歩下がって、拳を握った。
それは駄目だ。自分がフレンの負担になっているなんて、そんなのは。


ユーリはフレンに会うべく、生徒会室へ駈け出した。



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