青空の唄 4
*フレユリ現代設定
*ちょっぴり甘め
*エステル友情出演
「ユーリ!ユーリにあげたいものがあるんですっ!」
星空観賞会から少し経った、冬も本格的になり始めた頃。
生徒会があるフレンを、今日は待つことなく帰ろうと思っていた矢先、
相変わらず何か輝きオーラを発しながら、エステルはユーリのクラスを訪ねてきた。
もう放課後な為、人はまばら。
教室にも、ユーリ以外に人はいない。
「どうしたんだエステル?そんなに急いで」
「これ、ユーリに渡そうと思ってたんです!」
と、差し出されたのは、何かのチケット。
エステルらしくミュージカルとかかと思ったが、どうやら違うらしく。
「…スケート?」
「はい。先週、スケートリンクがオープンしたの知ってます?」
ほら、とチケットの裏に書かれた地図には、隣駅近くが載っている。
ユーリはふと、渡されたチケットが二枚であることに疑問を持ち、
「で、一緒に行こうって?」
「いえ。フレンと一緒に行ってきてください」
フレン、と。
思わず停止してしまった頭に変わって、口だけがエステルの言葉を反芻する。
フレンと…二人で、スケート。言っていることは分かるが、言っている意味が分からない。
「リタと二人で行くつもりだったんですが、リタの都合がつかなくて…」
「エステルと私じゃ駄目なのか?」
「いえ、駄目じゃないですけど…!」
フレンと一緒は駄目です?と首を傾げられ、しかもその顔が懇願に近いような、
なんとなく断りづらい雰囲気を醸し出していて、思わず「うっ」となる。
ユーリはもう一度チケットを眺め、その日程が今週末であることを確認すると、
一つ溜息をついてエステルに向き直った。
「ありがと、エステル。貰っておく」
「え?あ…はい。フレンと楽しんできてください!」
「ま、あいつが空いてるかは分かんないけど…」
スケートって興味あるし、と続けば、エステルは満面の笑みを浮かべてユーリの両手をとった。
「きっとユーリ、すごく上手です!」
「おいおい、まだやったこともないよ」
「大丈夫です!それに、フレンが助けてくれますよ」
「…あいつもやったこと無いと思うんだけどな」
でもできそうだなぁと思うのは、フレンが転ぶような所を想像できないからか。
「感想聞かせてください!」と、なぜか自分の事のようにはしゃぐエステルを見て、
ユーリはいつものように苦笑した。
『もしもし、ユーリ?』
『おーフレン。今週末空いてるか?』
『今週?日曜日なら空いてるけど』
『じゃあちょっと付き合え』
『は?突然何を…』
『どうせ明後日、うち来るだろ?その時に言う。それじゃ』
『ちょ、ユーリってば!』
そして日曜日、フレンとユーリはスケートリンクに足を運んだ。
「まったく、説明を省きすぎ」
「なんだよ、いつまでもうるさい」
「君が言わせてるんだよ…」
結局、金曜日まで連絡をしなかったユーリはフレンに小言を言われつつも、
そことなく楽しみにしていたスケートリンクを眺めて頬が高揚していた。
寒さのせいもあるが、あまりこういったお金のかかる遊びには縁が無かったため、
エステルに感謝しつつ、始めてはいたスケート靴に驚きの声を上げる。
「なんか変な感じ…これで本当に滑れんのか?」
「僕も初めてだからな…転ばないようにしないと」
笑いながら、まずフレンがリンクの上に足を置く。
多少バランスを崩しつつも、転ぶことなく壁に捕まって滑り始める。
その様子を見て、ユーリもおそるおそるリンクに上がった。
「…った!わっ!?」
壁を掴んでいたはずなのに、足に上手く体重が載せられず、思わず尻もちをついてしまった。
うぅ、とうめき声をあげて再度立ち上がろうとするが、これもなかなか難しい。
「…ユーリ、起きれる?」
「見りゃわかるだろ!」
起きれないんだから助けろ、とばかりに睨みつけられて、フレンは「はいはい」と手を差し伸べる。
「行くよ?壁つかまって…せーの!」
掛け声と同時に上半身を引っ張られ、ユーリの身体が宙に浮く。
あまりにも軽々と持ち上げられたため、ユーリ自身驚いて、思わずフレンをまじまじと見つめる。
「…どうしたの?」
「いや…なんでもない」
そう言えば、こいつは男なんだよな、と思わず納得してしまった。
あまり性別を気にしたことはないが、こういう時に軽々と持ち上げられてしまうとその差を意識せずにはいられない。
背だってフレンの方が高く、当たり前だが体力的にフレンの方が断然上なのだ。
軽々と持ち上げられるのだって、仕方がない…
「ユーリ?大丈夫?どこか打った?」
「だ、だいじょうぶ大丈夫!」
至近距離から覗きこまれ、思わず身を引いたと同時に足元が滑る。
「あ、転ぶな」となぜか冷静に、視界が天井を向いたと思うと、今度は身体がピタリと止まるのを感じた。
力強い腕に支えられていると、ぐっと抱き込まれるような形で身体が元の位置に戻る。
フレンの胸板あたりに顔が近付いたと認識したら、それはつまり抱き込まれている体勢なんじゃないかと想像し、
ユーリは顔が赤くなるのを感じた。
「…もう、危ないなぁ」
「……」
「ユーリ?」
「…ちょ、ちょっと…このままで…」
赤い顔を見られたくはなかった。
こんな風にフレンを意識した事は無かったし、フレンだってそれを知っているだろう。
だから、変な風に誤解をされたくない。
実は傍から見れば、「抱きしめていて」と同じポーズなのには気づかないあたりが、ユーリらしいと言えばユーリらしいのだが。
フレンの腕を掴み、そっと体重を彼から離して。
ユーリは、赤くなった顔を元に戻し、にやりと笑った。
「流石フレン、馬鹿力は変わってないな」
「…君ねぇ」
「嘘だよ。サンキュ!助けてくれて」
(この想いに、気付かないフリをして)
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