青空の唄 2
*フレユリ現代パラレル
*エステルとリタが居ます。1の続き
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま…」
満面の笑みを浮かべたエステルと、いつもは小食だと言いつつも当たり前のように皿を綺麗にしたリタ。
大満足の夕食は、もちろんユーリの手作りパスタである。
「美味しかったです!」
「あんた、本当に上手いわよね」
「お褒めに預かり光栄です」
執事喫茶に居たら確実にファンが付くであろう。
ユーリは女性だが、そこら辺の男共より断然かっこいいと評判なのだ。
皿を片づける前にと、目の前に紅茶のおかわりが注がれる。
ほわほわと湯気がたつそれを手に持って、エステルは「至福の一時です」と呟いた。
ここは、エステルの家。言い換えれば、豪邸。
本日開催される”星空観賞会”は、エステル発案エステル宅の泊まり込み企画だ。
「フレン、来れなくて残念です」
「ま、あいつも忙しいからなぁ」
「女3人のほうが気が楽でいいわ」
フレンには悪いけど、とリタの言葉に、確かにとユーリも頷く。
ユーリ自身はもう今更だが、エステルとリタは確かに気を使うだろう。
二人とも女性としては魅力的で可愛い。
「ユーリって、フレンと付き合ってないんですか?」
「んぐっ!?」
純粋無垢な唐突すぎる質問に、ユーリは飲んでいた紅茶を噴き出すという古典的なリアクションをとってしまった。
リタは、横目でそれを見つつも、特に助ける様子はない。
「げほっ……はぁ?」
心底胡散臭そうにエステルを見ると、ですから、と再び、
「フレンと付き合ってないんですか?」
「フレンと?誰が?」
「ユーリが、です」
「はぁ…付き合ってないし、まず何でそんな発想になったか教えてくんね?」
バカっぽ、とリタは食事中は横に置いておいた本を手に取った。
どうやら、この会話に参加するつもりはないらしい。
「いつも一緒に居ますし、同棲してるんですよね?」
「どっ…!違う、断じて違う!そもそも、一緒に住んでるわけじゃねーし」
「え?でも一緒に帰ったり、休日とかも二人で買い物に行ってるじゃないですか」
それは住んでるとは違う、とリタは心の中で突っ込んでみた。
ユーリは、何をそんなにと言わんばかりに目を見開いて、首をかしげる。
わからないのではなく、そう言った「恋心」がフレンに対して抱いた事がないのだ。
それに何よりも、普通、といった感覚が強すぎて。
「…別に、特別なことでもなんでもない。昔からそうだし」
「大丈夫ですよユーリ、照れなくても」
「いや、照れて無いし」
「今日、色々教えてくださいね!」
ああ、折角のロマンチックな星空が。
目を、それこそお星さまのようにキラキラさせるエステルと、逆にげんなりしたように下がっているユーリの肩。
リタは、「まぁ予想どおりね」と二人の様子に溜息をついた。
「……で、風邪をひかないように気をつけてねって、僕言ったよね?」
はぁ、とフレンの口から漏れた声に、ユーリは言葉に詰まった。
ベットの住人であるユーリの額には、ピタリと張りつけられた冷却剤。
熱で朦朧とする意識の中、フレンの声だけがやけに冷え冷えとしているように感じて。
「もう何度も言ってるけど、全然学ばないんだから」
「……」
「僕だって毎日来られるわけじゃないし、君だってこの時期に風邪ひきやすいってことぐらい…」
わかってるでしょ、と続けるためにユーリの顔を見て、フレンは慌てる。
ユーリの瞳から、ぽろりと涙が浮かび、熱に潤んだ瞳を更に溶かしていて。
フレンの言うことも分かるが、自分だって風邪をひきたくてひいてるわけではない。
いつもなら言い返してるけれど、今日はなんだかいつも以上に胸が痛くて、言い返したくても言い返せない。
言葉が浮かんでは消えて、こみ上げるのは涙ばかり。
「ちょ、ユーリ…!」
「……」
「ごめん、ごめんね。別に君の事を責めたいわけじゃないんだ」
「……」
「ただ、君の事が心配で」
こくり、とユーリは肯く。
フレンはほっとしたようにユーリの髪にそっと手を通して、汗で首に張りついたそれを整える。
その手つきは優しくて、彼が心底心配してくれてるのが分かる。
そっと彼の手に頬を押し当てた。
「ユーリ?」
「…フレンの手、きもちいぃ…」
そっと撫でてくれるその手は、冷たいけど温かい。
その時、エステルの言葉がふと浮かんだ。
思わず、フレンの顔をじっと見てしまう。
「…どうしたの、ユーリ?」
「…うぅん、なんでも、ない」
『フレンは、ユーリの事好きですよ、絶対!』
エステルの言葉が、浮かんでは消える。
確かに。好きかも、しれないけど。
自分だって……
好きになったって、いつまで一緒にいられるか、分からないから。
*****