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*死ネタでフレユリ短文三連発
*非常に電波です…





痛みなんて、とうの昔に消え去った。

「ユー、リ……!」

誰かが叫ぶ。ふわふわとした感覚。
ぼんやりとした視界に、大好きな人の顔が浮かんだ。

「ふ…れ、ん…」

手を伸ばしたいけれど、どうやらもう動かないみたいだ。
苦しくないのに、すごく重い。

「ユーリ!しっかりするんだ!」

フレンの顔が近くなる。きっと、屈んでくれたんだ。
覗き込む青色の瞳は涙に濡れていて、フレンが泣く必要なんてないんだと伝えたい。

「フレン、フレン……」

でも、フレンの名前しか出てこないんだ。
他に言葉を忘れたみたいに、ただ名前を呼び続ける。
きっと彼なら察してくれる。
自分は、彼にそんな顔をさせたくないのだと。

「ユーリ、だめだ、目を閉じるな」

視界が薄暗くなったと思ったら、そう言われて、ああそうかと納得する。
もう瞼を持ち上げる力すら、自分には残っていない。

何を言えばいいだろう。
ありがとう、でもごめん、でも、さよならでもない。
人生に悔いはない。お前が居なかったら、きっと俺は此処まで来れなかった。
だから、柄ではないけれど、感謝してるんだ。
ただ、ただ。
俺だって、ほんの少しの欠片くらいは思っていた。
生きて、お前と一緒に未来を――

「ふ…れ……」

最期まで名前しか呼べない。
脳裏に焼き付けるように。
忘れてしまわないように。

透ける様な青に満たされて、意識は深く沈んでいった。



...somewhere





その事実を理解する前に、自分という存在が麻痺した。
執務室に座っていれば、窓を開けてあの姿が見えるのではないか。
強引に中庭に連れ出されて、軽く体を動かそうと誘ってくれるのではないか。
あの、黒く流れる髪と、夜空を切り取った様な瞳が、消えてしまったなんて。

「フレン閣下」

呼び止められて、振り向く。
そこにはかつての自分の隊で働いていた騎士が一人。
書類を手渡されて、短く礼を告げた。
しかしそのまま退くことはなく、騎士は言いづらそうに躊躇ってから、口を開いた。

「その…ソディア隊長も心配されておられます。少し、休まれたらいかがですか?」

こうやって気にかけてもらうことは珍しくない。
自分ではあまり感じたことはないが、周りから見たら自分は働き過ぎらしい。
…それもまた、彼が教えてくれたことだけれど。

「大丈夫だよ。心配をかけたみたいで、悪いね」
「いえ!そのようなことは」
「書類は、後ほど陛下に私からお届けする。君は下がってくれて構わないよ」
「はっ…失礼致します」

形式ばかりの会話だ。
それだけしかできない。それだけで十分だ。
空気ばかりが変わらないこの城内で、自分という存在は保たれているのだから。

―フレン

不意に、名前を呼ばれた気がした。
あの暖かくも冷たい声色で。
最期に赤く染まった、彼の姿そのものが。

「……っ」

消えろ。消えてしまえ。そんなものを、僕に見せるな。
彼は死んでなんかいない。だってこんなにも鮮明に、彼の声を思い出せるのに。
自分を呼ぶ声が。自分の名前を、ずっと呟いて、ただそれだけを繰り返した、あの声が。

―フレン

瞼を閉じないで。君の姿が薄れていく。
いや、そんなはずはないんだ。
だって、君は今ここに…すぐ傍に、居るじゃないか。
僕が名前を呼んだって、君は気紛れだからそう頻繁に姿を見せるわけではないけれど。
たまにやってきて、一緒に昔話をして、下町の復興について話し合って。
時には剣の稽古をして、彼が作ったお菓子を食べて、また来るよと言い残して君は去っていく。
それだけだろう?
君は、まだこの世界のどこかで、困った人を助けているのだろう?
努力が実ったら、騎士団を辞めて、君と一緒に旅がしたい。
何にも縛られない、ただの旅が。

―フレン

だからユーリ、早く帰ってきてよ。



...someday






「そっか」

君はそう呟いた。

「ごめんな、フレン」

何に謝られているのか分からなくて。

「ずっと一緒に居てやれなくて、ごめん」

どうして。君は今こうして、僕を抱きしめてくれているじゃないか。

「こんな俺を…想っていてくれて、さんきゅ」

当然だろ。君は僕の誇りだ。僕の半身だ。

「嬉しいよ。お前という存在が、俺を生かしてくれた」

僕もだよ。君がいたから、僕は僕で在れたんだ。

「フレン」

うん。

「フレン…さよなら、だ」

ユーリ?

「俺の面影なんて追ってたら、人生楽しくないだろ」

そんなことないよ。

「俺は俺の人生を、精一杯生きた。お前は、お前の人生を生きろ」

そこに君が居なければ、意味がない。

「そんな馬鹿な事あるかよ。目を覚ませ。お前を好きな人間は、いっぱいいるんだ」

…ユーリ、行くな

「さよならなんだ、フレン。しっかりしろ」

嘘だ、嘘だ…君は、だって君は、今ここにいる!

「ずっと見てるから。お前の事。世界の事。お前の隣で…だから、現実を見ろ。前を向け」

ユーリ……なんで…なんで君が…

「じゃあな、フレン」

……ユーリ!!待って――




――手を伸ばした先に誰もいないことを、やっと理解できたんだ。



...sometime



その日、ただひたすらに泣き続けた。
君を想って泣いた涙は、これが初めてで、最後だった。






*****
何だこれとか言われそうですね。
ユーリが死んだあと、フレンがそれを受け入れられないっていうパターンを書いてみたかった。
それだけです…電波\(^p^)/
諸々脳内補完は皆様の素敵な妄想によって成り立ちます。