最後にさよならを

*フレユリでED後
*フレンがもし敵になったら妄想




あれは、いつの事だったか。
空を、破滅をもたらすものが覆っていた時。いや、もっと後かもしれない。
思い出せないが、その内容はとても覚えている。
二人で、星喰みから世界を守った後の話をした。

その時は、負けるなんてこれっぽっちも考えていなかった。
不安を仲間の前で曝け出してしまえば、志気に関わる。それくらい自分には影響力があることは自覚していたし、だからこそ、「もしも」のことなんて考えたくなかった。
戦いが怖いとか世界の行く末がかかっている戦いだとか、みんなの前では言うけれど。
本当は心のどこか、一部でも、不安が巣食っていた部分があったのかもしれない。
フレンが隣で、「負けないよ。君と僕が居るから」なんて自信満々に言うものだから、柄にもなく強張っていた身体が解きほぐれた気がしたから。

「お前、この戦いが終わったら、騎士団長になるんだよなぁ」
「そうだね。ついに夢に手が届くよ。早すぎて、怖いくらいだ」
「はっ、確かに。もうちょっと下っ端でいた方がいいんじゃねぇか?」
「あはは、それは言えてるかもね」

そんな軽口を叩く余裕を見せて、不安も恐れも抱いていないかのように笑う。
頭が固くて衝突することも多々あるが、フレンのこの余裕に何度助けられただろう。
こいつが隣で笑っているだけで、なんだか全てがうまく行く気がする。
不思議な信頼と、安心があった。

「僕は、アレクセイのようにはならない」
「お前は大丈夫だよ、フレン」

目と目が、合う。どちらも真剣な色を宿して。
夜闇の中でも綺麗なフレンの瞳は、海のような青に揺れている。

「もしお前が変な方向に逸れたりしたら、ぶん殴ってでも正気に戻してやるよ」
「…君は、頼もしいな」
「おいおい。そこは、「そんなことにはならないよ」だろ」
「ははっ」

軽く笑って、フレンは俺から視線を反らした。
顔が影になって、少し見えづらい。だが、目をそっと細める仕草が、見えた。
遠く未来を見つめ思想する、顔。
「そうだね」、とフレンは呟いた。

「約束だ。僕は、僕の信じるやり方で、前へ進む。だから…」
「だから俺は、お前の背中を守る。間違った道に進まないように、見張っててやる」








―あの約束は、「そうならないこと」を願った約束だった筈なのに。


すらり、と抜いた剣の、その切っ先を前方へ向けた。
蒼いマントに身を包み、鎧越しにもわかる鍛え上げられた肉体。
隙のない立ち姿の左腰に備わった鞘と剣の柄には、手が添えられていた。

「…来たんだね、ユーリ」
「ああ。お前をぶん殴りにな」
「信じてたよ。きっと君が来てくれると」

閉じられていた瞼がふわりと開くと、いつもと変わらない筈の青瞳がちらりとこちらに視線を送った。
それは、本当にいつもと変わらないフレン。「まったく、窓から入ってくるなんてもうやめなよ」と小言でも言いそうなくらい、自然な気を纏っている。
嘘をつくにしても、敵としてこちらを待っていたにしても、不自然なほどに自然。
そんな様子のまま、フレンは言葉を続ける。

「…僕達は、いろんな誓いをした」

朗々と歌うような、そんな声で。

「覚えてるかい?あの最終決戦の前。オルニオンで意思を賭けた時の事」
「ああ、お前が俺にこてんぱんにやられた時の事か」
「逆だろう?僕が君に勝ったんだ」
「だけどお前は何もしないで、俺の意志を尊重してくれただろ?」

会話は続く。向けた切っ先を下すことはしない。
右隣りでは、ラピードが臨戦態勢に入りつつも、二人の様子を伺っているようだった。

「単なる勝ち負けじゃない。俺達が剣に乗せるのは、俺達の誓いだ」
「わかってる。わかっているさ」

向けていた切っ先から、構えの姿勢をとる。
鞘から抜かれた長刀を構え、フレンはユーリをひたりと見据えた。

「じゃあ、今のお前のそれはなんだ!」

その叫びにも、フレンの表情は揺れなかった。
代わりに、チャキリと剣が音を立て、フレンの手の中で揺れる。

「フレン…!!」
「あの時、君は言った。僕達の意志は、これによって貫くと」
「……」

数秒の沈黙が、訪れる。
言葉を交わすことはしない。
必要以上の言葉は、フレンとの間には存在しない。
お互いがお互いの主張と意思を譲らないならば、そこに言葉などあってはいけないのだ。
言葉で勝っても、フレンは納得しない。
だから、説得なんてしない。そんな遠慮は、要らない。

「…いいぜ。俺が、お前を止める」





(俺達は、これでいい)
*****
シリアスにしたいんです、本当は。
でも、直接手を下すシーンは書きたくないと言うか…フレンがユーリに斬られるシーンってあんまり想像できないなって自分で書いてみて思いました。
一応コンセプトは、ラスボスフレン、なんですけどね…どこが?とか言われそうだ。

2011.4.3 書きなおし
部分的に追加しました。しっくりきましたが、場面そのものは変わってません。
二人にとっての誓いは、剣によってなされるものというイメージで。