淡色の雪

*フレユリでユーリ皇族設定
*甘くてほのぼのに落ち着いた。短め。
*ユーリがフレン大好きすぎです。


窓の外には、降り積もる白が一面に広がっている。
帝都ザーフィアスには、明確な季節というものは存在しない。だがエステルの話を聞くところによると、世界のどこかには四季という四つの季節を繰り返す場所があって、そこでは春、夏、秋、冬と名付けられたそれぞれの季節が訪れては、折々の趣向を楽しむらしい。

そんな楽しみを人々が感じている場所は、さぞかし心の温まる、豊かなところなのだろう。
この世界では、雪は、幸福や夢を運ぶものではない。
確かに見ている分には綺麗だし、貴族街にはこの寒さに応じた服を着て出歩いている人も多い。商人たちは寒さにめげず市街を活気づけているし、言うまでもなく城の中は温度が一定に保たれていて温かい。
ユーリは寒いのを得意とはしていなかったが、城内に居る分には全く問題がないため、実のところあまり寒さというものを肌に染みるほど感じたことはないのだ。

昔から、部屋の中は温かいのが当たり前だと思っていた。
フレンに、そんなことはないと教えてもらうまでは。



「…ユーリ、こんな時間に、何所に行こうと言うんだい?」

音もなく扉を開け、フレンが呆れ気味の声をかけると、ユーリはぴくりと肩を震わせた。

「外は寒い。そんな薄着で、しかももう日が沈む。行くことはお勧めしないよ」

隠し事など通用しないと言われたようで、ユーリは口を尖らせて振り向いた。

「…ったく…タイミング良すぎだろ、お前」
「そうだね。これでも殿下の専任騎士だから」
「殿下って言うな嫌味かそれは」

手元にあったマフラーを投げつける。フレンはそれを難なく受け止めると、ユーリの元へ歩みを進めた。
少しだけ背が高いフレンがじっと見つめてくると、ユーリはなんだかそれに耐えられなくなって、視線を下げた。
フレンの手に掴まれたマフラーが、くしゃりと皺になっていた。
何も言わないフレンに、さらにユーリが沈黙する。怒っているわけではない。呆れているのは手に取るように分かるけれど、フレンという男は思考が思っている以上に複雑だったりするから、この場合は謝るのが良いのだろうか。しかし、謝るのは絶対に筋違いだし、そもそも悪いことをしたつもりはない。
ならば、フレンが促していることは。

「…雪、降ってるから。寒いんだろ?下町は」
「そうだね。たぶん、宿屋の女将さんがみんなに暖炉と温泉を開放してるだろうから、寒さを凌ぐためにそこに集まってるんじゃないかな?」
「……」
「それだけ?」
「…行ってみようかと思って」

国民の生活を知らないなんて、自分の皇族としてのプライドが許さない。いや、そんな格好付けた言葉ではなくて、ただ知りたいだけだ。知って、見て、どうすればいいかを考えたい。
素直にそう告げれば、フレンはふぅとため息をついて、握っていたマフラーをふわりとユーリの肩にかけた。
ユーリは少しだけ驚いたようだったが、それもほんの一瞬で笑みへと変わる。

「僕も一緒に行くよ」
「サンキュ」

手を握って言えば、フレンも少しだけ頬を赤くして。
握られた手に一つだけ口づけを落とし、手の甲を額に当てる。
共に行きます、という動作。忠誠を誓った者に送る敬愛の意味を含めて。

「コート持ってくるから、待ってて」
「ああ、頼む」

ぱたりと扉が閉じられ、ユーリは手の甲を愛しいもの眺めるかのように見つめる。
そして、軽く、触れるだけの唇をあてた。





*****
あまりにも寒くて頭に浮かんだ話でした。
書いてるうちに雪とかあんまり関係ない話になりましたが。ドンマイ自分。
皇族設定、反響があって嬉しい限りです。浮かんだらまた筆が動くかも。
結果的に甘くなりました。そう言えば、結果的に甘くなるって多いな…
きっと冬は甘いものが食べたくなるからですね。ユーリお手製ココアでぬくぬくすればいいよフレン。

皆様、寒さに負けずに頑張りましょう!