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向けられる先に

*ソディアとパティでシリアス
*ソディアにとっての"フレン"とは
*かなり主観が入っています



フレンがユーリと共に居る。それだけで胸がざわついていた時もあった。
自分の中の大事な「何か」を守るために、壊してしまおうと思ったのはなぜなのか。
自分は、一体何がしたかったのだろう。


オルニオンの夕暮れ。
騎士団の拠点を離れ、ソディアは消えたフレンを探していた。
先程、ユーリと何か言葉を交わしていたのまでは見た。
しかし、その内容を聞くような無粋な真似はできずに、任務の報告をしただけで終わってしまったのだ。
今ここでフレンを探す必要はない。ただ、傍に控えていないと落ち着かないような、むず痒い気がして。
決して大きくはない街のはずれまで来ると、展望台とも言える見張り台の上に金髪が見えた気がして、ソディアは声をかける。

「フレン様!」

きっと彼は、いつものように凛とした表情で、来るべき決戦を見据えているのだろう。
そう考えて、声をかけてはいけなかったかと一瞬躊躇するが、次に聞こえてきた声はソディアの想像とは全く異なるものだった。

「ぬぅ〜うちはフレンではない」

ひょこりと現れたのは、同じ金髪でも長くおさげにした少女――パティで。
予想外の人違いに思わず赤面して、ソディアは慌てて謝罪する。

「す、すまなかった!」
「気にすることはない。フレンを探しとるのか?」
「あ、ああ。どこかで見なかっただろうか?」
「フレンなら、ユーリとどこかに行ったようじゃ」

ほら、とパティが指す先は、ソディアの位置からは見えない。
方向から街の外だろうが、どうやらフレンがユーリと言葉を交わした理由もある気がして、行くのも躊躇われる。
邪魔をしてしまうような、気がして。

「む。難しそうな顔をしてるの。折角だから上に来るのじゃ」

ソディアの表情から何を思ったのか、パティは手招きをする。
拒否するのも失礼だろう。が、あまり話したこともない人物と会話をするというのは、ソディアにとってはなかなか難易度が高い。
しかしどうしようかと逡巡しつつも、フレンを探す理由も見つからなかったため、見張り台への梯子を上った。

上から見えた景色は、広がる赤い空と、染まる街、夕暮れの煙、魔導器によって支えられた生活。
そして街の外、風に揺れる草原の中に、見慣れた二人が対峙していた。
フレンと、ユーリだ。
剣を抜いて、お互いの目を真っ直ぐに見て。緊張感が、此処まで伝わってくる。

「此処であったのも何かの縁。縁が深まれば絆、絆が深まれば仲間や恋じゃの」
「縁?」
「そうは思わんか?悔しいが、フレンとユーリには帆を張るロープの如く太くて切れない絆があるのじゃ」
「……」

打ち合いが始まった二人を眺めながら、ソディアはパティの言葉を反芻する。
絆。二人の間にある絆。確かに、ソディアも同感だ。
では、自分とフレンの間にある縁とは何なのだろう。
上司、部下。そんな、立場上の関係しか思い浮かばない。

立派で輝かしい、理想の人物。それが、ソディアにとってのフレンだった。
弱者に優しく、強者に立ち向かう。常に高い理想を掲げ、それに向かって努力する。弱音も吐かず、人を率いる眼差しはどこまでも綺麗。
…だが、そうではないのも、もう知っている。

「おぬしは、フレンの事が大好きなんじゃの」
「え、ええ?」
「いつもフレンの事を目で追ってるのじゃ」

なんだ、彼女はこんな性格なのだろうか?
混乱するソディアには気づいてないのか、パティはじっと彼女を見上げる。

「恋する乙女も大変じゃの」
「そ、恋する乙女では別に…!」
「では母親を取られた子供のようじゃ」

はっ、とパティの言葉に思考が冷静になる。
パティの眼差しも、子供の外見とはそぐわない深いもので。
ぐっと言葉に詰まる。

「からまった海藻のようじゃ。こんがらがって解けそうにない」
「……」
「ソディアにとってのフレンとユーリにとってのフレンが違うのは当たり前なんじゃがのぅ」
「…それ、は…」

なんだろう。何故彼女を前にして、こんなに想いが膨れ上がるのだろう。
自分にとってのフレン。それは、

「…フレン様、は。素晴らしい方だ。誰にでも公平で実直で。私のような者を信頼してくださって」
「そうではなかったのか?」
「……あの方にとっての、信頼とは…なんなのだろうと…」

そうだ、引っかかっていたのは。
自分にとってのフレンという像を変えた一番の原因。それは、彼からの『信頼』。
ユーリとフレンの関係を見て、フレンにとっての自分とは何なのかという疑問。

ソディアの中の『絶対』を壊したユーリ。
フレンにとって『絶対』を壊そうとした自分。

「ふむ。おぬしにとってフレンは、その程度の存在だったのかの」
「…っ!?」
「他人との絆を見せつけられたぐらいで揺らぐようでは、まだまだじゃ!」

うちはフレンとユーリの絆を知ってもユーリの事が大好きなのじゃ!、と自慢げに胸を張る。
そこには、ユーリに対する信頼が見て取れた。おそらく仲間としてユーリもパティを信頼しているだろう。いや、『凛々の明星』の面々は、各々仲間を信頼している。ユーリとフレンの絆を見ても、それが当たり前と思えている。
自分がその思えなかった、その一番の理由。それは。

「…悔しかった。フレン様の一番は私だと思っていたのに。私がフレン様の隣に立つに相応しいと思っていたのに」

フレンに対する勝手な押し付けの願望だった。
フレンの隣に立てる人物は自分しかおらず、またフレンにそれを許されているのも自分だけだと思っていた。

「私はなんて身勝手なんだ」
「尊敬や敬愛は時に人を盲目にする。理想ばかりが美化されて、いつしか暗ーい海の底に沈んでしまうのじゃ」

いまいち喩が伝わらなかったのか、それとも胸に響くものがあったのか。
ソディアは顔をしかめると、打ち合いをしているフレンとユーリに視線をやる。
だが、その眼はどこか遠くを見つめているようで。
涙がこみ上げてきそうだったが、ソディアは深呼吸をしてそれを抑えた。

「…私はフレン様を信頼している。だが、それだけではいけないということか」
「誰か一人だけを至上と思うのは悪いことではないのじゃ。だが、人は一人だけで生きているのではないということをちゃーんと念頭に置かねばいかぬのじゃ」
「……パティ殿…」
「大丈夫。おぬしはちゃーんと分かっておる」

ちょっと暴走してしまったがの、と茶目っ気たっぷりで笑いパティは空を蠢くソレを見つめた。
ソディアは、軽く一礼だけすると、梯子を降り始める。
どこか吹っ切れた表情をしているのは、おそらくフレンに対しての気持ちの整理がついたからだろう。
問題はユーリに対して、だが。そこまで言っては逆に混乱してしまう。それに、ユーリとソディアのことについて自分が何か言葉を投げるのは、違うとパティは思っていた。
そこは、おそらくフレンあたりが解消してくれるだろう。


それにしてもフレンも罪作りな男じゃのう、とパティは呟いて、草むらに寝転がる二人の青年に温かい眼差しを送った。




*****
なんか書ききった感が…!
ソディアとパティで語りをお送りしました。私がソディアに対して思っていることは全部詰めたつもりです。
私の勝手な思考回路ですけど、たぶんソディアのフレンに対する想いといのは、恋心ではない。
神聖視、ともちょっと違う気がする。言葉としては陳腐とか思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
『信頼』の一言に尽きるんじゃないかと思います。
『信頼したい、されたい、する、しない』。その思いが強すぎて、(傍から見ても明らかに)フレンに信頼されているユーリを見て、「私よりもフレン様に信頼されているやつがいる」みたいに思ってしまって。
「隣にふさわしくない」って言うのも、「(フレンの)隣に(自分だけが)ふわしいはず」という行き過ぎた形での信頼がフレンに向けられていて、それを同じだけ返されていると思い込んでしまった。
しかし、人と人が生きている中で、自分とは違う道を歩んできた人々が自分の知らない人と絆を持っているなんて当たり前のこと。それを気に入らないからって壊すのは、自分が信頼している相手にも失礼。

言葉遊びみたいになっちゃった…けどそんな感じ。
それにしても決戦前夜とかゲームしてないのに!シチュエーション捏造しまくり!笑
本当に二人で語るような時間があったのかは知らないんだごめんなさい。
まぁ細かい時間設定はスルーの方向で。お願いします。

リクエストありがとうございました!遅くなってしまいすみません。