夜明けの前に

*ED後。フレン+ユーリ+ジュディス
*主にフレンとジュディスの二人語り
*とある酒場の一シーンです



すでに夜も更け、客足が少なくなってきたとあるザーフィアスの酒場。
店の入り口から最も遠く、半分以上はカーテンに仕切られて中が見えなくなっているようなテーブルに、ユーリは突っ伏していた。
その隣には、呆れ半分、微笑み半分でユーリ見るフレンの姿。
二人して久しぶりに酒を飲んでいたが、どうやらユーリの方が早くつぶれたらしい。

「お邪魔だったかしら?」

以前とは違い、少しばかり露出の抑えられた(それでも周りは十分だと思っている)服を身に纏ったジュディスは、そっとカーテンを押し上げてフレンに問うた。
背後から突然声をかけられ、フレンは多少なりとも驚いたようだったが、すぐにジュディスの席を空ける。

「ジュディス。久しぶりだね」
「ええ。団長さんも忙しいでしょうに」
「たまには良いかと思って」

目配せを了承と心得て、ジュディスはフレンの隣に腰掛ける。
その向かい、ユーリは、起きそうにもない。

「よく寝ているわね」
「折角久しぶりに会えたというのに、薄情なものだろう?」
「あら?貴方だからこそ、彼もこうやって安心して酔うことができるんじゃないかしら」

違いないわ、とジュディスは微笑む。
ジュディスも彼と飲むことはあるが、大抵の場合ユーリは酔う前に飲むのをやめてしまう。
あまり酒が得意でないことを自覚しているのもあるが、何よりフレン以外の前で酔うことに抵抗があるのだろう。
以前、酔ったところを女性と勘違いされセクハラまがいの事をされたことがあるから、と本人も言っていた。
だからこそ、フレンの前でこうやって眠ってしまうほど自分を曝け出せることは、フレンを心から信用しているからに違いない。
フレンもそのあたりは否定するつもりはないらしく、再び手にあるグラスを傾けるだけだった。

「妬けるわね」
「ユーリにとって、僕がそういう居場所になればいいと思っているから」
「流石、男前ね。団長さん」
「君に言われると、なんだか怖いな」
「あら、心外だわ。私だって、ユーリの事が好きだもの」

突然の告白に少しばかり驚いたようだが、ジュディスの目が面白げに細められているのを見て、フレンは思わず小さく吹き出してしまった。
まったく彼女は、何処まで本気なのだろうか。
いや、好きという言葉に偽りはないのだろう。それは本心だろうし、そう想ってくれる仲間が居るユーリを羨ましくすら思う。
自分には、そんな風に心配してくれる誰かはいるのだろうか。

「それにしても、どうしたんだい?こんな時間に」
「…明日、依頼が入ったのよ。それをユーリに伝えてきたのだけど…ね。そっとしておくわ」
「起こすよ?」
「いいわ。可哀想だもの」

女性にそう言わせてしまうのはどうだろうかとフレンは苦笑したが、確かに、こんなにぐっすり眠っている人を起こすのも忍びない気はする。

「それに、今日も働き詰めだったもの。一日くらい休んだって罰は当たらないわ」
「ユーリは文句を言いそうだけどね」
「それを納得させるのが貴方の特権でしょう?」
「特権かな?」
「疲れてると思うもの、彼。弱音一つ吐かないのも相変わらず」

困ったわ、と眉を寄せる。フレンもそんなユーリの性格は熟知しているから、どうしようも無いのは分かっている。
ユーリ本人は無理をしているつもりはないだろう。無茶をしているとも思っていないに違いない。
けれど、周りから見ればそれが立派な無理無茶なのは、3年前から変わらない。

あれから3年経ったが、世界はなかなか思うようにはいかなかった。
当たり前だ。生活を形成していた根本が機能しなくなったのだ。そう簡単に人々は納得しないし、不満のはけ口は徐々に大きくなり、膿だって生まれてしまう。
でも、それを最小限に抑えるのが自分たちの仕事だし、早く人々の生活を安定させるのは自分の仕事だ。
本来は、こうやって休む暇すらなく働かなければいけないのだが…

「でも、今日僕を誘ったのはユーリの方だよ。まったく、自分の事は棚に上げて、人の心配ばかり…」
「あなたこそ。ユーリを休ませるためになんとか時間を作ったのでしょう?」
「分かるかい?」

首肯して、「お互い様でしょう?」と首をかしげる。
乾いた笑いをもらしながら、フレンは口を潤す。

ふふ、と笑ってジュディスは席を立った。
もう帰ってしまうのかとフレンが問うと、ジュディスはふと気付いたかのようにフレンを見つめる。
カーテンを片手に、首だけ振り向いた彼女は、真剣な目をして微笑んだ。

「勿論、私たちだって貴方の事、心配してるわ。無理はしないでね?」

そう言い残し、ジュディスは颯爽とその場を後にした。
残されたフレンは、青天の霹靂とばかりに驚き、目を見開く。
まるで心を見透かされたようで、じわじわと気恥かしさが増してくる。
傍から見れば酒のせいで赤い顔は、だが決して酒のせいではないと自覚すると、どうにもむずがゆいと言うか、不覚の嬉しさがこみあげてくる。

ユーリの前では見せられない。こんな、情けない表情(かお)。

ジュディスの心遣いに感謝しつつ、今ばかりはユーリが起きないで欲しいと顔を片手で覆った。








「…ぅ…」
「ユーリ?目、覚めた?」
「…ぅん…?」

まだ覚醒しきれてないのだろう。
焦点が合わない瞳に、フレンはそっと語りかける。

「眠かったら、部屋に戻りなよ」
「…ぉぅ」
「…まったく…」

よいせっ、とユーリを担ぐ。
はらりと一房、髪が前に垂れユーリの顔に影を作る。

「…フレン…」
「ん?なんだい?」
「…まちがって、な…よな…?」
「……ああ」

フレンは、顔にかかる髪をくすぐったく思いながら、力強く肯いた。

「間違ってない。二人で叶えるんだろう?」



約束を。







*****
長々と書きましたがフレンとジュディス。一回書いてみたかったので満足 笑
ユーリとジュディスの会話も大人っぽいですが、フレンとジュディスってどういう会話するだろうと試行錯誤しながら書きました。
ジュディスはいつも通りだけどちょっと意地悪かなぁ、とか、フレンはユーリに対するほど軽くないけどレイヴン相手みたいに堅くないなぁとか。
結果、ジュディスに微笑まれて赤くなるフレンに落ち着きました(因果関係が意味不明)
なかなかうまくいかない世界に、フレンを心配したユーリが飲みに誘いましたが、逆に心配されてます。
そんな関係が好き。ついでにユーリはお酒が入るとフレンに弱音吐けちゃうとかもっと好き。
うちのユーリは皆に愛されてます。


他にもこんな人たちの会話が見てみたい!という方は
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