ここにいるから

*フレユリ
*死ネタ(直接描写はでてきません)



優しく風の吹く地で、金色の髪が揺れる。舞う花弁すら、彼を祝福するように降り注いでいて。
空を映す彼の瞳の色は、空色と同じであって全く違う。もっと深く、もっと力強い、蒼。
きっと人々は、その瞳を空のようだと言うだろう。彼こそが、皆を見守る空のように暖かい存在だと。
きっと人々は、その髪を光のようだと言うだろう。彼こそが、皆を率いる太陽のような輝かしい存在だと。
けれど彼を真実、知る人たちは、彼の瞳の中の深さの理由を知っている。
彼の金色も、実は黒髪の彼が居るからこそ輝くのだと。
――居たからこそ、輝くのだと。

「…見ているかい?」

虚空に。花舞う虚空に、呟く。
応えはない。なくていい。それが当り前なのだから。
そう思えるようになるまで、随分とかかってしまった。
彼とは離れている事の方が多かったのに、折に触れて思い起こされるのは彼の事ばかりだった。
自分と彼の夢こそが、生きる理由。彼に恥じない人生を送るために。
再び彼の前に立った時、かつてのように軽口を叩けるように。
彼との、夢、を。
叶える事ができただろうか。世界は変わった。変わる事が出来た。
新しい一歩を踏み出す事が出来た。
古い確執も、全てが払拭出来たわけではない。
でも、自分が出来る精一杯で、自分達が描いた未来を築けた筈だ。
だから、だから。

「君に、会いたいよ」

世界は良くなったのだと、直接彼に伝えたい。
評議会の独裁も、騎士団の暴走も、全部なくなった。
ザーフィアスを中心に市民の生活水準も上がり、評議会の権限は市民議会と分担し、騎士団も魔導器が無くとも魔物と渡り合えるまでになった。
そんなことを全て伝えて、そして、他愛もない話がしたい。

決して長くはなかった彼の生。でも、間違いなく輝いていた。夜の闇の星のように。
欲を言えば、本当はもっと輝いていられたのに。
彼はそれを、望まなかった。望めなかったと言っていい。
でも自分は望んでいた。彼と生きたかった。彼と新しい世界を築きたかった。
自分にとって、光も影も、彼だけだった。

でも、君は言うんだ。
『お前の創る未来が、楽しみだ』って。

そんなこと言われたら、頑張るしかなかったじゃないか。

忘れてなんかない。忘れようとも思わない。
君と僕の、確かな、約束。









「…フレン?」

背後から、問いかけるように名前を呼ばれた。
一つ、息をつく。
優しい姫に、優しい笑顔を向けるために。

「何でしょうか、エステリーゼ様」

ゆっくりと体ごと振り返れば、エステルはフレンの隣に並ぶべく歩みを進めているところだった。
風を受けて、腰まである長い桃色の髪が、揺れる。
彼に憧れて、伸ばしたのだというその髪。
頭一つは背の高いフレンを見上げ、エステルはにこりと笑った。

「こちらにいらしたんですね」

ええ、と声に出す代わりに、頷くだけに止める。
二人でここからザーフィアスを眺めるのも、もう数え切れないほどだ。

最初の頃は、エステルもフレンをそっとしておいた。
フレンの隣は、彼という存在だけが相応しいと思っていたから。
もちろん、それは今も変わらない。
でも、フレンは、そんなに弱いヒトではなかった。

「…綺麗です。もうすぐ、帝都の桜も満開になります」

いつでもその花弁が舞っているハルルは特別だ。
その美しさは変わらない。
しかし帝都の桜は、その短い期間に咲き誇る様が、ハルルとはまた違った美しさをもっていた。
まるで、彼のために。彼のように。

「フレン。ハルルの視察が終わったら、ぜひ私の家に来てください。美味しいお菓子をもらったんです」

「それは…お気遣い感謝します。では、後ほど」

フレンは、柔らかに返す。瞳に、もう暗い影はない。
黒髪の彼を追っていってしまいそうだったあの頃とは、違うのだ。

(…ねえ、ユーリ)

エステルは、心の中で呼びかけた。愛しい名を。

(フレンを遺してくれて、ありがとうございます)


彼は真実、世界を光で満たしてくれたのだから。






*****

初書TOVにしてユーリ死にネタでしたすみません…
ED後、結局25歳くらいで世を去った影の英雄ユーリの話とか、できたら何話か書いてみたいです。
しかし需要はあるのだろうか←

見方によってはフレン→ユーリですが、私の話の根底は、らぶらぶフレユリではなく、お互いがお互いに寄せる絶対的な信頼関係フレユリなので。
別に女性向けとかそんなわけではない。

感想とか頂けたら嬉しいです。