アンコールプラネット
*ディグレティーンズ イン TOVでほのぼの
*ティーンズと凛々の明星メンバー
*かなりの捏造設定が含まれています。なんでもオッケーな方はどうぞ
*らいなー様のみお持ち帰り可
咲き乱れる、ハルルの花弁。
魔導器としての役目は終えても、もともとが高齢の大樹であることやエアルの存在そのものが無くなったわけではない。
夏には緑豊かな木陰を。秋には葉が落ちることなく雄大な茜色を。冬には、白に色を変え。
そして今。春は、桃色の花が空から光を纏って舞い降りてくる。
「…んで、エステルの方の調子はどうなの?」
「最近は公務も増えてきましたから、お城に居ることも多いです。ですが、時間を作ってはハルルにも来てるんですよ」
「へぇ…ま、無理しちゃだめよ。あと、ちゃんと護衛を付けること!」
「ふふ。リタったら」
ハルルの街の一角に、そんな和やかな会話を交わすエステルとリタの姿があった。
テーブルには飲み終わったティーカップと、お菓子がいくつか。
窓は開いたままで、外の風が柔らかく家の中を満たしている。
「それよりあいつ、遅いわね…」
「何かあったんでしょうか?」
「ま、あんま正確な時間決めてなかったしね」
仕方ないか、と言って窓の外を見れば、噂をすればなんとやら。
黒髪の青年と犬が一匹、遠目からでもはっきりと目立つ服装で、こちらに向かって歩いて来ている所であった。
エステルもリタの視線の向く方に目をやり、同じ影を見つけてふわりと微笑む。
約束の人物はまっすぐとこちらに歩いてきて、二人の視線に気づいたのか、ふとその眼が二人を捉えた。
「なんだ。やっぱ此処にいたのか」
「遅かったじゃない」
「場所が特に指定されてなかったら、ハルルの入り口で待ってたんだよ」
「はあ?エステルの家があるんだから、エステルの所に居るに決まってるじゃない」
「あー…はいはい」
もはや何を言っても仕方がない、とユーリは早々と降参をして、リタの隣に座るエステルに笑いかけた。
「よっ。久しぶりだな」
「ええ。もう一か月近くぶり、ですね」
「なにあんたら、そんなに会ってなかったの?」
「何回か帝都ですれ違ったんだがな」
「お互い、忙しいですし」
ね、と頷き合う二人に、リタは曖昧な相槌を打つ。妙に仲が良いのが腹立たしいが、今はそれを詮索する時間はない。
席を立って、エステルに礼を言う。また来るから、と約束してエステルの家を後にした。
先を歩くユーリに並んで、夕暮れのハルルの街を歩く。
「んで、今日は何処に用があるんだ?」
「ダングレスト。あいつらが来てるみたいだから、ちょっと話とこうと思って」
「へえ。あっちも久しぶりだな」
「『黒の教団』なんて怪しい名前、最初はどうかと思ったけど…ま、技術は大したもんだし」
街の入り口にたどり着く。
ジュディスとカロルが、待ち侘びたと言いながら二人を出迎え、バウルに乗り込んだ。
目指すのは、ギルドの巣窟ダングレスト。ドン亡き後、新たなる統治を始めた、変革の都市。
そしてその中に、一ギルドとして新設されたギルド『黒の教団』。
魔導技術の最先端を密かに研究する、得体のしれないギルドである。
*****
「わあ、皆さん。お久しぶりです!」
「久しぶり、みんな」
「元気にしてたさー?」
「……」
四者四様の歓迎は相変わらずで、久方ぶりに相見えることとなったユーリ達と黒の教団のメンバー。
笑顔全開で出迎えてくれたアレンとリナリー、そしてその後ろでいつもの後頭部に手をやるポーズをとっているラビ、そして仏頂面で違う方向を見ている神田。
全員、ギルド黒の教団のメンバーで、リタと同じ年頃の少年少女である。
「よっ。お前ら全員揃ってるのも結構珍しいな」
「今日は、全員で集まって報告とか色々やることがありまして」
「そう言えば、黒の教団の本部ってここじゃないんだよね」
カロルの質問に、リナリーが頷く。
「本当なら本部にいかなきゃなんだけど、遠いし、此処でオッケーにしてもらったのよ」
「わざわざ行くのは面倒さー。ま、武器のメンテとかあったし」
ほらあれ、とラビが指す方向には、黒の教団が有する精鋭の技術者たちが、何やら機械や術式を解析しているようだ。
まったく関係のない世界、とユーリやカロルはお手上げ状態でそちらを見遣るが、リタは嬉々としてリナリーに尋ねる。
「ね、リーバーたちは今日来てるんでしょ?」
「うん。奥の部屋だと思うけど…」
「この前言ってた術式、結局組みあがったのかしら…あれが効率的にマナ変換機として運用されれば、間違いなくエネルギー変換技術がエアルに代わる新しい方式として確立されるはず…いやでもあのままだと…」
「おーい、リタ。難しい話なら、リーバーたちとやってこいよ」
既に周りの音が一切耳に入っていないリタ。ユーリはジュディスを顔を見合わせ、肩を竦めた。
リタはそのままふらふらと研究所に入っていき、その姿は部屋の奥に消える。
相変わらずですね、とアレンが苦笑した。
「皆さんは、何か御用があって来たんですか?」
「俺たちは、天才魔導士様の付添なだけだ」
「あ、そうだったんですか」
「ねえ!せっかくだから、手合わせとかしてみない?」
「手合わせ、ですか?」
「うん!一対一でも、二体二でも」
「あら、面白そうね」
カロルの提案に、ジュディスも賛同する。
目を丸くするアレンに代わって、ラビがやる気の無さそうな声で「いいんじゃない?」と笑った。
「俺、一回ユウとユーリの手合わせ見てみたかったんさ〜」
「…ラビ。お前、それが目的だろ」
「いんや?俺もちゃんと参加するよ?」
「じゃあ、私と手合わせなんてどうかしら?」
「ジュディスちゃんとか…怖そうさー」
ははは、と冷や汗を垂らしながら乾いた笑いを零すラビ。
当のユーリはちらりと神田を見て、どうする、と視線で問いかけた。
「……ちっ」
めんどくせえ、とありありと雰囲気で伝わる。
まあそうだろうなと、それなりに神田の性格を熟知しているユーリは端から手合わせをするとは考えていない―しかも、大勢の目の前で。
ジュディスもそのあたりは理解しているのか、にこりと笑みを浮かべたままだ。
リナリーはそっけない神田の態度に、いつもの通りに怒りを露わにする。それもまた、ただのじゃれ合いの一環にしか見えない。
「言い出しっぺのカロルは、どうするんだ?アレンとやるか?」
「え、僕?そうだなぁ…僕、ユーリと一緒に、アレンとラビの二人と手合わせしてみたい!」
「お、ダブル?」
「僕は構いませんけど…」
ジュディスはどうするのか、との視線に、当の本人は涼しい顔で「気にしないで」と微笑む。
「私は、リナリーと一緒に外で見てるから」
「私もそれでいいよ」
「やった!じゃあ早速…」
「やったああああ!!」
突然、まるで雷のような声量と振動が建物全体を包み込み反響し、カロルの言葉を遮った。
数秒の間は、硬直の時間。ガッツポーズのまま停止したカロルが復活するまで、およそ三秒。
よく知る天才魔導少女の叫びは、どうやら何かの発展か進展を意味しているらしく、研究室の中がざわついていた。
「…な、なに?」
「たぶんリタだろ」
「間違いなくリタだと思いますよ…」
アレンも呆れたのか吃驚したのか、両方とも取れる表情でツっこんだ。
全員が全員、それぞれが驚く中、研究室から興奮した面持ちで出てきたリタは何やら装置らしきものを片手に、ユーリに歩み寄る。
「これ!ちょっとアンタ試してみて!」
「は!?突然何を…」
「いいからこれ付けて、前みたいに何でもいいから技とかぶっ放してみて!」
「おいおい、せめて外で…」
「じゃあさっさと外行くわよ!ほら、早く早く!」
強引に引っ張り連れられて行ったユーリの背中を、残された六人はただ呆然と見送って。
ジュディスは、ふふ、と手を頬にやって、首をかしげた。
「ああなったら、きっと何か楽しいことが起こるわね」
「いいんさ…?あれ、放っておいて」
「いいのよ」
楽しいでしょ?と面白がる目は細められて、何故だかぞっと寒気がしたラビは体を震わせた。
その時、のそのそと奥から白衣の男性が現れた。
「リーバーさん…あれ…どうしたんです?」
「いやちょっと…色々とアグレッシブというか…ついていけなくなったというか…」
アレンの問いかけに、ぐったりと扉に凭れかかる。
外では爆発音やら物騒な音が数度聞こえた後、意気揚々とリタが戻ってくる。
「リーバー、成功よ!術式によるエネルギー変換じゃなくて、マナの制御の方が魔導器みたいな暴走も抑えられるかも…そしたら、エアルに負担を掛けないから生態系に影響はないし、精霊に依存しすぎない最低限の変換効率で…とすると、つまりは…」
「おーい…」
「ほら、さっさと次やるわよ」
抗議の声も心には響かないらしい。
さっさと研究室にリーバーを置いて去ってしまうその小さな背中を、えー、という声を上げてリーバーが追って行った。
「…大丈夫、ユーリ?」
「……ま、無事は無事だな」
(もしかして何の違和感のない両者の日常)
*****
らいなー様へ!
本当に、あまりにも違和感のない日常風景になりました…ディグレもヴェスペリアも世界観が寛容すぎて感動です。
リクエストありがとうございました!これからもどうぞよろしくお願い致します。