きっとどこかに居るあなたへ after story
*フレユリ♀で現パロ、甘め仕様
*リクエスト「ユーリが小さい頃に離れ離れになったフレンを探すためにアイドルをしている話」の続き
*ストーカーとかでてきます。
*神無月様のみお持ち帰り可
テレビ出演から二月が過ぎ、三か月目に入った。
曲の売れ行きは上々のようで、比例してユーリが載っている雑誌の売り上げも好調。
事務所に届くユーリへの手紙は以前の倍以上になり、ネット上でのユーリの知名度は以前とは比べ物にならないほどになった。
前半は、ユーリ自身が確認しているので、その量に「テレビってすごいな…」と呟いて。
ネットに関しては携帯電話以外もメール電話しか使わないユーリにしてみればあまり実感のないところであって、あくまでジュディスに聞いた話に止まっている。
ファンサイトらしきものがないわけではないが、特に関与しているわけではないし、面倒くさいという理由でブログなどもやっていない。
「ミステリアスな雰囲気」と呼ばれる原因の一つだが、ユーリにしてみればいちいち自分の行動を文章に起こすなどという手間はしたくないという、ある意味アイドルらしくない性格によるものだ。
ジュディスによれば、好感度はそこそこ良いらしく、女性から見れば「格好いい女性像」に当てはまるユーリに対するコメントは好意的なものが多い。
兎にも角にも、出演を機にその名が広めることが目的だったユーリは、広まった後がどうなるかを深く考えなかったわけではない。
フレンだけに知っていてほしいと思うけれど、それは確率としては圧倒的に低い。フレン以外の人間がファンになるのは当たり前だし、何千万といる人口からたった一人だけに向けたメッセージがその人だけに届くなんて有り得ないのだ。
例えば、よくあるドラマ的な、街中に行ったら声をかけられるだとか。
変装をしてなるべく自分だと分からないようにした方がいいだとか。
男は何をしでかすかわからないとか(これは語弊があると思われるが)。
どこまでが現実世界とリンクするか分からないが、ほんの半年ほど前にストーカー被害にあっているユーリにしてみれば、笑いごとではなく気をつけておこうと思っている。
思っているのだが、現実はそううまくいかないようで。
「…はぁ」
溜息をつきたくなるのは、もはや諦めも混じっているからだろうか。
暗く街灯の少ない夜道、というわけではない。普通の日常、夕方でまだ人通りもある。
そんな中、どうも事務所を出てから感じる視線は、行き交う人に「見られている」限度を超えている気がしていた。
職業柄、そして生まれ持った感覚の鋭さも相まって、ユーリは人の視線や気配を強く感じることができる。
だからこそ、先程からどうも付きまとう気配にどうしようかと悩んでいたところなのであった。
「帰るか…戻るか…」
ぽそりと呟いて、両方の可能性を検討してみる。
自宅に帰る場合。
当たり前だが、相手に自宅を教えることになるのだから、あまり取りたくない選択肢だ。
このまままっすぐ道を行けば自宅に辿り着く。その前に相手を捕まえてしまう事も可能だが、人が多い所で事を起こせば警察だなんだと面倒だ。
事務所に戻る場合。
これがおそらく一番危険性が低い。事務所に戻って捕まえるように言ってもいい。
だが相手を撒いて事務所に辿り着くのは難しく、もと来た道を戻らなければいけない。
相手の姿がこちらから見えない以上、突然の方向転換にこちらの意図を察して襲いかかってくるかもしれない。
およそ時間にして数秒。
ユーリはくるりと踵を返して、もと来た道を戻る選択肢を選んだ。
即ち――相手に、襲いかかられた方が手っ取り早くすむ、という選択肢だ。
突然の方向転換に靡いた髪を緩くまとめ、動きの邪魔にならないようにする。
そうして歩き出した視線の先に。
(あいつ、か)
分かりやすいと言えば分り易い。視線が、明らかにユーリを捉えているから。
睨みつけるように鋭い視線を送れば、にやりと笑って薄気味悪い唸り声が相手から発せられた。
「ユーリ・ローウェル…だなぁ?」
まるで捕食者かのように舌なめずりする様に、背筋を這いあがった悪寒がぞわぞわとユーリの肌を波立たせる。
こいつちょっとヤバいんじゃないのかと思うのは、その身体全体から発せられる気持悪さの衝動。
ユーリは答えることはせず、相対するようにぐっと足元に力を入れた。
「…いぃぜぇえ…このザギ様を楽しませてくれよぉ!!」
容赦なく殴りかかってきた男に、ユーリは持っていた鞄を使ってうまく力を殺すと、来た道を引き返すべく走り出した。
ちらりと後ろに視線を送れば、交わされたのに怒っているわけではなく、再び薄気味悪い笑みと共に襲いかかってきた。
「ちっ、冗談じゃねぇ!」
通行人が何事かと立ち止まってユーリを見るのが分かるが、構ってはいられない。
とりあえず相手の目的は自分だけのようだから、周りに被害が及ぶような心配はなさそうだ。
(仕方ない。とりあえず撒きつつ、事務所になんとか…)
戻れるか、と思案していたら、ぐっと後ろに引っ張られ息が詰まった。
「ぐっ――」
「捕まえたぜぇえ」
髪を掴まれたか、と判断した瞬間、条件反射で鞄を相手の顔面に叩きつける。
その衝撃で緩んだ手から髪が解き放たれ、一発腹部に入れてやろうかと逆に突き出した拳を、受け止められる。
「くっ」
「面白れぇ…」
細い路地に突き飛ばすように、ザギの手がユーリの手を捻り上げた。
「いぁっ…!」
「もっと俺を楽しませろよ、あぁん?」
「…このっ」
掴まれている手ではなく、足で相手を蹴り上げようと試みるが、身軽にかわされて不発に終わってしまった。
ひねり上げられた手と、もう片方の手も掴まれ一つにまとめ上げられてしまい、逃げようにも逃げられない態勢に、どうしようかと探る。
どうすれば相手を退けられるか。自分以外に被害が及ばないように、この場で決着をつけるならば。
先ほど通りかかった人が見ていただろう二人のやりとりを、警察に言ってもここまで来るのに時間はかかるだろう。
ならば、自分で何とかしなければ。
「さぁて…」
濁っているのにギラギラと光る不気味な瞳で、ザギはポケットからナイフを取り出した。
(おいおいおい……!?)
「一体、何の恨みだよお前!?」
「楽しませてくれりゃ何でもイイんだよぉ!!」
振りかぶったナイフが、己に突き刺さらんと光を受けて反射して。
完全にイってしまっている相手に、目を瞑って歯を食いしばって、来る衝撃に構える。
――しかし、聞こえてきたのはナイフが空を切る音ではなく、自分を拘束していた手が突如消えて。
その代わりに肩に置かれた暖かな手と、耳元で響く静かで優しい息遣いに包まれた。
一拍遅れて、派手な音と共に電信柱で頭をぶつけたのか、どさりと倒れる音がした。
痛そうな音ではあったが、どうやら助かったらしいとほっと胸を撫でおろす。
肩に置かれた手が外されて、そこでやっと誰かに助けられたことを認識して。
「助かったよ。ありが…」
見上げた先。
相手の顔、姿、全てに覚えた既視感にユーリの言葉は止まり、その人物を食い入るように見つめた。
青く澄んだ瞳がユーリを捉え、何か言おうとしているのか口が開く。
しかし、はっとしたようにユーリの背後に視線を送り、次いで急ぐようにユーリの腕を掴んで走り出した。
「ちょっ…!」
「話は後で」
ざわざわと背後に人が集まっている気配に、確かにあのままあの場に止まっていては、色々と面倒だろうと冷静に判断できるようになって。
ユーリは、ザギをあの場に残していくことに不安がありつつも、とりあえずは騒ぎにならないうちに逃げようと、手を引かれるままに後ろをついていった。
* * *
いくつかの曲がり角を進んで、どうやら彼は縦横無尽に走っているだけのようだ。土地勘があるわけではない動きに、ユーリは足を止めて相手に停止を求める。
それに逆らわず、足を止めた彼は掴んでいたユーリの手を離して。
息を切らした風もなく、振り返った。
「…怪我はない?」
十年以上前に聞いた声とは異なる、でも低くて温かい声が耳に心地良い。
青く綺麗な瞳はそのまま。伸びた背はユーリより高く、何か運動をしているのか体格もしっかりしている。
モデルという職業から、人の身体を見る目はそれなりにあると思っていて…その格好良さに頬が赤くなるのが分かった。
こくり、と頷くだけで。突然訪れた邂逅に言葉も出ない。
彼はそんなユーリの様子に、良かった、ととても優しく微笑んで。
「会いたかった、ユーリ」
「……!」
間違いじゃない。人違いじゃない。
「なん、で…どうして?」
「ずっと君の事探してた。勝手に消えた僕を、君は忘れてしまっていたかと思ったけど」
そんなことありえないと言いたいのに、言葉が詰まって。
「でも、この前君の歌を聞いたんだ…驚いたよ。テレビの向こうにいるなんて」
君じゃないかと思った、と肩をすくめて、そっと手を伸ばしユーリの髪を掬って。
整えるように髪を梳く手を感じながら、ユーリの心に一つ一つの言葉が沁み込んでいく。
「あれは、君も、僕を探していたと…思っても、いいかい?」
反則だ、と。そんな笑顔で、嬉しそうで切なそうで。こっちを見るなんて。
そんなの、探していたに決まっている。探していたからこそ、歌詞は自分で書いたし、込めた想いは目の前の人物にだけ向けられたものだった。
ちゃんと届いたのだ。彼も探してくれているという確率に賭けて、それが叶ったのだ。
ユーリは、泣き出しそうな自分を抑え、ずっと恋い焦がれてやまなかった名前を、音に乗せた。
「――フレン…ッ!!」
会いたかった、と感極まった想いをいっぱいに詰めて。
ユーリは、フレンの胸に飛び込んで行った。
「落ち着いた?」
「うん…サンキュ」
「話したいことたくさんあるけど…ここじゃ無理だね」
「家、近いから来るか?」
「いいの?お邪魔しても」
「いいよ、フレンだし。助けてもらったお礼も」
「それは別にいいんだけどね。でも、だったらお邪魔しようかな」
「なあ、フレン…」
「うん?」
(お前にまた会えた事が、こんなにも自分を幸せにしてくれる)
*****
はい、お約束お約束^^;
うぅ…趣味と妄想とネタで突っ走った…。
本当に余談というか、神無月様に了解を頂けて書いたものなので、すごく自分の趣味に走りました。
フレンとユーリの…再会話…甘っ。
きっと漫画になったらときめけるんでしょうけど、自分の文章だとときめきに限界が…すみません…
書けて満足ですけどね!あくまで自己満足の領域!
それにしても、ザギって難しいですねぇ…口調とかただの変態にしか見えない本当に。結局彼はどうなったのでしょう…。
神無月様、お持ち帰りしていただけるようなクオリティに達していないことこの上ないですが、楽しんでいただければ光栄です。