ラビンング・ユーのその後で
*ラビング・ユーのその後のお話
「…というわけで、今年はチョコを用意してない」
ガーン、と顎がはずれるのではないかと思うほど口を大きく開け、ショックを全身で表現したアシェット。
ユーリは、悪い、と軽く手をあげて片目を瞑るが、ユーリのチョコを楽しみにしていた身としてはゾンビになり果てる程には衝撃的だった。
別にアシェットは、ユーリの事を恋愛対象として見ているわけではない。
そもそもフレンがユーリに一図な想いを向けていたことを知っているのだから、尚ユーリに好意は持てど恋心を抱くなど考えたこともないのだ。フレンに親友と呼ばれるくらいには、アシェットはフレンの事を知っている。
だからこそ、いくら恋人同士になったとはいえ、まさか今までユーリに貰っていた(自分への)義理バレンタインチョコを没収される羽目になるとは…思ってもいなかった。
「フレンの奴…ユーリのチョコを独り占め…」
ひとりじめ、と呟くアシェットに、やはり作った方が良かっただろうかと脳裏をかすめるが、フレンと約束したのだ。それを反故にするわけにはいかない。
しかし、本気で泣いている風のアシェットに罪悪感が湧かないわけではないので。
「…あー…今度、作ってこようか?」
「ひとりじ……え、まじで!?」
「あぁ。どうせまた何か作ってくるだろうから、そん時で良ければ」
別にバレンタインではないし、アシェットに特別に、てわけでもないし。と誰にしているのかユーリ自身も分からない言い訳を心の中でして。
アシェットは目を輝かせ、ユーリの手を取る。
「サンキュー、ユーリ!」
「あ、あぁ…」
そこまで喜ぶとか、嬉しいけどなんだか怖い。
「じゃ、エステル達んとこ行くから。フレンがもし帰ってきたら、言っといて」
「了解!」
数分前とは正反対の、満面の笑みを浮かべたアシェットに見送られ、ユーリは教室を後にした。
そんなこんなでお菓子を貰う約束をユーリにつけてもらったアシェットはご機嫌だった。
そう。その背後に、いつの間にかフレンが迫っているのに気付かないくらいに。
「…アシェット。随分ご機嫌みたいだけど、どうかしたのかい?」
「ユーリに!チョコ貰う約束した…ん、だ…」
両手を広げて歓喜を滲ませた笑顔が、フレンの笑顔を見た途端、正気に戻ったかのように真顔になっていく。
恐る恐る、という喩さえ生ぬるいほど戦々恐々とした視線でフレンの顔を再度見れば、全く目が笑っていない笑顔を目の当たりにすることに。
「えっと…えー…フレンさん?」
「ユーリのチョコ、ねぇ」
どういうことか、教えてくれる?
(俺は何も悪くねーっ!!)
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