(言葉にして伝えないと不安になるリィンをいつだって言葉で支えるユーシスのお話)
「お前…のことは、その…」
リィンは言葉を探すように視線を彷徨わせてから、躊躇う様子もなくユーシスを真っ直ぐと見上げた。
「家族と同じくらい…大事なんだ。大切で、守りたくて、繋がりが断たれてしまうのに耐えられない」
優しくて甘い、虚言だと昔の己ならば答えただろうか。ユーシスは自問し、そして内心苦笑した。おそらく、その通りだ。
リィンとユーシスの家族に対する感情は、当たり前だが全く異なるものだ。
己が抱くそれも、決して冷たいものではない。傍からどう見られようと、兄を尊敬し、父に認められたいと想い精進を重ねた事に後悔や辛さなど無かった。
だがリィンが抱くような、守りたいとか大事だとか、そんな暖かい感情は薄かったように思う。
己が妾の子である事も、父が決して自分の目を見て話さない事も、当たり前の事実として受け入れてしまう程に暖かさとかけ離れた家であった。むしろ、そういった感情を抱く先は母の方が強かったからこそ、既に己の手の中に存在しないものとして認識していた。
求めるものでもなければ、与えられるものでもなかった。
「ユーシスとの繋がりが無くなってしまうとか、そんな話じゃないんだ。ただ俺が、臆病なだけかもしれない」
僅かに震えた指先が堅く握りしめられてしまう前に、ユーシスはそっとリィンの手を取る。
この手が、自分に家族の暖かさを教えてくれた。
この手が、自分をここに引き留め、強い力を与えてくれた。
リィンがいなければ、リィンでなければ。
守りたいと焦がれ強く在ろうとする意思も、隣に立ちたいと背中を預ける尊さも、知ることは無かった。
こんなにも安心できる存在を、ユーシスは他に知らない。
「…俺は、決してお前を離さない」
リィンの手が、今度は強く震えた。
軽く添えていただけの指先が、しっかりと握り返される。
リィンがいつだって損失に怯え、彼の幻影を見ているなど自分でなくとも気付いている。
だから突然、大切だなどと面と向かって言い出したのだろう。
「家族の尊さを俺に教えてくれたのはお前だ。兄上の事も、父上の事も、お前が居てくれたら乗り越えられた」
時が癒すなど傲慢だ。損失を恐れるなど当たり前の事で、リィンにとって拠り所であった存在が目の前で散っていったのだ。
それが己に置き換われば、決して大丈夫だ、前を見ろなんて無責任な事は言えない。
だから、感謝を伝えるのだ。
繋がりは永遠に続く。不安を抱いても、臆病になったとしても、ユーシスだけは決してリィンの手を離さないのだと。
「ありがとう、リィン」
そうしてリィンが浮かべる心の底から安心した笑みと、「ああ」と自信に輝いた瞳を向けられる事に、いつだってユーシスは堪えきれない程の幸福を得るのだ。