(ユーシスとラウラとリィン。15歳くらい)
別れの時はいつだって寂しい。
また来る、とユーシスが右手を。また稽古をしよう、とラウラが左手を。
三人で輪を作るように手を繋いで、秘密の約束のように誓う。
「そうだ、リィン。いつでも良いから、レグラムへ遊びに来てはくれないだろうか?」
ケーブルカー乗り場で別れの挨拶を交わしていると、不意にラウラが問うた。
思ってもみなかった、とリィンは目を丸くする。
「ユミルは素晴らしい所だが、レグラムも風光明媚で美しい街だ。是非、私の家に遊びにきて欲しい」
「ラウラの……」
本で読んだ事のあるレグラムは、湖に面した霧の街。かの有名なローエングリン城がそびえ立ち、昔懐かしい街並を目当てにした観光客も多いという。
「もちろんユーシスも、だ」
「…善処はする」
ユーシスは珍しく言葉を濁し、ラウラに謝るように視線を下げた。
その意味を、リィンもラウラもちゃんと理解している。
どうしてもユーシスの立場上、自分の行きたいという願いだけでどこへでも行けるわけじゃない。
手段は数多くあっても、リィンより遥かに不自由なユーシスは、それらしい表向きの理由を付けなければレグラムに赴く事は難しいだろう。
ユミルに来るのだって、ルーファスの口添えがあってこそ。
「…分かった。いつとすぐには言えないけど、必ず行くよ。ユーシスと、二人で」
少し驚いたようなユーシスと、顔を綻ばせるラウラ。
二人に見つめられて、力強く頷いた。
「絶対って思ってないと、何も始まらないだろ?」
「…そうだな」
「うん。その通りだ」
今度は三人で笑い合った。
ケーブルカーの搭乗音が鳴る。別れの合図に、誰からとも無く手を離した。
踵を返した二人に手を振って、離れ行く彼等をデッキから見送った。ずっと、その姿が麓の木々に隠れ見えなくなるまで。
次の約束を、胸に灯して。
きらきらと、心が暖かくなる大切な時間を、リィンは二人から貰った。
家族とも、街の人とも違う、弾むような楽しさと胸を締め付けるような愛おしさ。
次に二人が来るのは、いつだろうか。
そう思える友が居る事を、誇らしく思った。