(ラウラとエリゼ。出会い)



リィン兄様にお友達ができた。
父様の知人の娘、だと母様に教えてもらった。
リィン兄様と同じ年齢で、青い髪を一つに束ねた美しい女の子。
優しい眼差しで私に手を差し出して、「初めまして」と挨拶をしてくれた。
背丈は私より高くて、屈んで真っ直ぐと私を見てくれて、とても良い人なのだな、と感じた。
母様の服を掴んでいた私は、レディとしてきちんと挨拶をしなければいけないと分かっていたけれど、なんだかとてももやもやとした気持ちで一杯だった。
それはきっと、女の子の後ろで私が見た事も無いくらい穏やかに微笑んでいる、兄様が居たからだ。
兄様が女の子に向ける視線は、すごく優しくて、安心していて。
私はそれがとても悲しかった。兄様が私の知らない表情を女の子に向けていて、心がずきずきした。

「私はラウラ・S・アルゼイドという。名前を教えてもらえないだろうか」

女の子にしては少し低い声。話し方はレディと言うより紳士のようで、きりっとした印象にとても似合っていた。
ちゃんと返事をしなければと思うのに、私は口を開く事が出来なかった。
兄様が心配そうに私を見つめている。ちゃんとしなきゃ。私は兄様の自慢の妹なのだから。

「エ……エリゼと申します」

震えていた声を精一杯大きくして、服を掴んでいた手を離した。
ラウラさんは、嬉しそうに頷いてくれて、立ち上がった。
リィン兄様とラウラさんが、すごく親しい人に向ける笑みでお互いに見つめ合うから、私はたまらず叫んだ。

「に、兄様は私のお兄様ですから、ラウラさんには渡しません!」

私の声はとても大きく響いて、兄様も、母様も、ラウラさんも驚いて私を見下ろした。
きょとん、とした兄様の顔を見上げたら、なんだか悔しくなってぐっと自分の服を握りしめる。

「…そなたは勘違いをしている。私とリィンは、友達だ。だから、そなたの兄様をとったりはしない」
「ほ、本当ですか…?」

ラウラさんは、さっきよりずっと深く座って、私を見上げるようにしてくれた。
服に皺を作っていた私の手を優しく握ってくれる。

「うん。友達なら、いいだろうか?」
「…では、私とも、お友達になって欲しい、です」

ラウラさんはちゃんと目を合わせて言ってくれた。きちんと人の目を見て話す人は信じて良いよと父様が教えてくれたから、私はラウラさんを信じる。
私の申し出にラウラさんは少し驚いたみたいだった。
さっき失礼な事を言ってしまったと今更恥ずかしくなって、ラウラさんの顔を見れなくなる。

「…嬉しい。私も、そなたとお友達になりたい」

その言葉に私も嬉しくなって、ラウラさんに抱きつく。
ラウラさんは、私の背に手を置いて抱き締め返してくれて、とても幸せな気持ちになった。
でも、私とラウラさんを見る兄様の顔がやっぱりきょとんとしたままで、相変わらずの鈍感さに睨みつけてしまった。