剣を交えたのは、これが初めてではない。
授業、実習中、ギナジウムを借りて戯れに。
仲間として、クラスメイトとして、お互いの剣はそれなりに知っているつもりで、呼吸や間合いを測り間違える事は無い。
戦術リンクは誰よりも多く繋がり、その存在を背に感じれば心のどこかで安堵する。
生半可な付き合いはしてないと――リィンも、ユーシスも思っていた。

だからこそ、バリアハートで鳴り響いた想いの剣は、何よりも雄弁に語っていたのだ。
リィンの前へと進む意思を。
ユーシスの真っ直ぐに貫き通すことのできない意思を。
ならば、委ねてもいいとユーシスはリィンの手を取る。
己の中に、ひと塊でも存在する矛盾。罪悪感。思わず目を伏せてしまうそれらを、飲み込んで自分の糧にできるならば。
この危うく、それでも進み続ける大切な友の隣で、己の剣を振るおう。
リィンが決して折れることの無いように。
ユーシスが決して罪悪感に押しつぶされないように。
それは言葉にせずとも、互いに沸きあがる信頼という絆だった。

それなのに、手を伸ばしても届かない。
騎神同士の戦いに生身の人間であるユーシスたちが割って入る事もできず、ただ今は”敵”としてルーファスに立ち向かわなければいけない現実。
圧倒的な実力差を見せつけられ膝をつき、パンタグリュエルからどのようにか映し出された映像内でカイエン公が高らかに哄笑する。

リィンが貴族連合に組するようにと嘲笑う姿に、怒りと戦慄が走った。

リィンが、その誘いを断るはずがない。
この状況で誘いに乗らなければ、オルディーネとパンタグリュエルの力でユミルは火の海になる…それを止めるには、自分たちの戦力はまだ足りていないのだから。
だから、顔は見えずとも、言葉は交わせずとも、Z組全員はリィンがとる行動など分かり切っていた。

それでも――悔しさに、堪えきれず叫ぶ。

不思議な光に包まれ消えゆく兄の姿。
白い戦艦に吸い込まれるように姿を小さくしていく、灰と蒼の騎神。
絶望に彩られるルシア夫人と、支えられて立ち尽くすテオの眼差し。

拳を地面に叩きつけ、背後でリィンの名を呼ぶアリサにつられ、悲鳴にも似た慟哭が胸の奥底から膨れ上がった。

「リィン―――!!!」