Z組は皆一様に驚き、その帝国時報を食い入るように見つめた。
リィンを除いて戻った、第三学生寮。
結局彼を士官学院に戻すことは叶わず、Z組の見送りにわざわざやってきた宰相に厳しい視線が注がれるのみ。
リィンの父親がギリアス・オズボーン…その事実は当然のことながら他言無用であり、Z組もそれに反対することは無い。
精神状態を鑑みれば、知っている人は少ない方が良いはずで、実際にこの問題に折り合いをつけられるのはリィン自身のみなのだ。例えZ組が何を言おうとも、フォローにはなるまい。
それが分かっているからこそ、歯噛みする気持ちであった。
そして、心に傷を負ったのはリィンだけではない。
あの場に居て、クロウが命を落とす様を見ている事しかできなかった彼等もまた、後悔と自責の念に責め立てられていた。
己が持てる全力で戦った。散った命も、理不尽な暴力も、抉るような傷跡を彼らの心に残していた。
だから、帝国時報が綴る”英雄リィン・シュバルツァー”に、怒りを覚える他無かった。
彼にすべてを背負わせ――ただ一人、あの場に残った彼は、どうなってしまったのか。
寄り添う事すらできず、帰還を余儀なくされたZ組は、何度も教官と交渉し、リィンの様子を見に行きたいと訴えた。
それでも許可が下りなかったのは、彼等がまだ学生であり、学院としても守るべき対象であるため。
リィンの安否を尋ねたくとも、≪鉄血の子供達≫は音信不通、かろうじてオリヴァルトと連絡はつくも、直接会うことは叶っていない。
そんな中、告げられたリィンの処遇は、あまりにも酷ではないかとアリサが叫んだ。
クロスベル総督府直属、臨時武官として共和国との戦闘に加わる事。
意味するところを正確に読み取ったユーシスは、兄上の考えそうなことだと呟いた。
「リィンの灰の騎神の力を共和国に示し、圧倒的な戦力差を見せつけるつもりだろう」
「そだね。騎神を使った戦闘が、戦場に与える影響は大きいと思う」
フィーもまた同意するが、エマとエリオットは気遣うようにユーシスに視線を送った。
それに首を振って、ユーシスは続ける。
「むしろ気にかかるのは、リィンがそれを承諾したという事だ」
「まだ決戦から一週間しか経っていないのに…」
「も、もしかして、何か弱みを握られてたり…?」
エリオットの言葉に、全員の表情が曇る。
その弱みとなり得るのが自分たちであるという自覚はあった。
それを利用する宰相であろうという予想も。
だが、ここに居ては自分たちにできる事は何もない。
真実を知る術を、まだ手にしていない。
然ればこそ、彼らは顔を見合わせ頷く。
その後、一週間。授業再開までにある決断をしていた。
お互いがやるべきことをやること――自分が歩むべきと思う道を、歩むことを。