※戦術リンクについて、実際にゲーム内で起きた事象に迸って文章にしてみました。
※閃の軌跡U発売後のお話ですが、ネタバレは無いと思います。
※実際に起きたのは閃U、緋色のダンジョンあたりだったのですが、ネタバレになるのでどっかの山道にしました。



ARCUSは、一度繋がった誰かとのリンクを切ると、別の相手と自動的にリンクが繋がるという不思議な機能を有している。
その場の戦況を読み、最善の戦術を。
トールズ士官学院の名を背負い戦うならば、相応の状況判断と対応が求められる。
それは、軍人として素質を見るためであり、逆に言えば不向きを見定めるための重要な観点であった。

曲がりなりにもZ組という特殊なクラスで、特殊なカリキュラムの下座学と実学に励んでいる身としては、
そうした状況判断は授業で戦術を学ぶよりも遥かに実践的で――同時に、個々の特性を十二分に発揮していた。
例えばラウラならば、渾身の一撃。フィーならば、刹那の追撃。マキアスならば、クイックチャージ。
リンクの繋がったパートナーに対して得意とする補助や攻撃を判断するのは、互いをよく知っているからこそ。

戦況を読み戦術を為す。

それ故に、Z組の誰もが歓迎できない、唯一のリンクアタックを有している人物が、リィン・シュバルツァーであった。



物理攻撃の効かない相手というのは、非常に厄介である。
それがリィンやラウラのような、剣での攻撃に特化しているならば、尚更だ。
今回は、山道の敵という性質上、物理攻撃が得意なリィンとラウラ、補助としてアーツをメインとしたエリオット、どちらにも対応可能なユーシスのパーティを組んだ。
それが裏目に出てしまった、というのが後日のレポートでのラウラの一文である。
防御が異常に高い魔獣というのが立ちふさがる、それを予知するのは難しい。
ある程度、どこにどの魔獣が生息しているかを把握してはいるものの、決して全てではないし、中には変異種も存在するのだ。

「――はあっ!!」

ラウラの剣が一閃、普段ならば敵を豪快に気絶状態にまでしてしまう攻撃は、僅かにしか効いていないように見える。

「リィン!」
「任された!」

一瞬にして繋がったリンクは条件反射のようなもので、ラウラの声に応えるようにリィンが前に出る。
しかし彼の攻撃もまた、何かに吸収されて微々たる威力のみを残しているようだ。

「効かないか・・・!」
「ならば、俺が仕留める。エリオット、敵のアーツ防御を下げるがいい」
「分かったよ」

後衛と判断したユーシスは、エリオットとリンクを繋げて指示を出す。
的確なそれに是を返し、二人は同時にアーツの詠唱に入った。
詠唱中はどうしても無防備になる。
リィンとラウラは顔を見合わせると、それぞれ後衛と敵との間に身を置き、迫りくる敵の攻撃を弾き返していった。

先に詠唱が完成したのは、エリオット。
淡く白い光に包まれ、敵の姿が霞む。
効いている証拠だ。

ちらりとユーシスに目を遣れば、どうやら詠唱も終わりそうだ。
リィンは目の前の敵を注意深く観察しながら、どのような動きにも対処できるように構えを少しばかり解いた。

――その時、敵の視線がユーシスの後ろに注がれるのを感じ。無意識のうちに戦術リンクをユーシスとの間に切り替えた。

「――ッ!!」

アーツを唱えるユーシスの背後。
蔦のような何かが彼を貫くよりも早く、リィンが太刀を振るう。
蔦はユーシスに届くことは無く・・・、それを庇った、リィンの右肩を貫いた。

「リィン!!」

エリオットの悲鳴と共に、ラウラが蔦を切り落とし、力を無くした蔦がぼろぼろと崩れ落ちる。
肩に染み込む赤いソレを一瞥し、リィンは即座にリンクをラウラとの間に戻した。
突然の切り替えが続き、驚くエリオットにリィンが叫ぶ。

「ブーストアーツだ!」
「!わ、わかった!」

ユーシスのアーツが完成したのを感じたリィンは、リンクを解除してその機能を最大限に利用した。
結果的に見ればそうだが、とてもこの状況で即座に判断できるものではない。
己が傷を負い、それでも冷静に判断するのならば・・・それは、『自らが傷つく事を前提としている』に他ならない。

「くらえ」

ユーシスの凛とした声が響く。
点から降り注ぐ魔力の刃に貫かれ、敵は一撃に倒れ伏した。
一つの宝箱とセピスを落とし、そこに存在しなかったかの如く消え去っていった。

ふう、と息をつくユーシスに、エリオットが「やったね」と声をかける。
それに微笑を返し僅かに頷いた後、一人膝をつくリィンを見下ろした。

「・・・お前のそれは、どうにかならないのか」
「それは・・・すまない。性分だ」

左手で頭を掻きながら、駆け寄るエリオットが治癒術をかける様子に、「すまない」と一言謝る。
その様に、ため息をつきたい気持ちを落ち着かせたユーシスが低く唸った。

「厄介なものだ。庇われる方の身にもなってみろ」

声に苦いものが混じる。
ユーシスがリィンを非難したいわけではないのは分かっているから、ラウラは静観するだけだ。
ただ、気持ちだけはユーシスに近いものがあったから、無言でリィンを見遣る。

「別に、自分を蔑にしてるとか、そういうつもりじゃないんだ。ただ、あの時はあれが最善だと思ったから」
「・・・阿呆が」

確かに、リィンが庇わなければ、ユーシスをあの蔦が貫いていたかもしれない。
致命傷にはならなくとも、集中力が途切れてアーツが中断していたかもしれない。
繋がっていく数々の「しれない」を最初に断ち切るため、リィンの判断は間違っていない。
それでも、自分を庇って傷つくなど、ユーシスにとっては後悔になる。
その事が分かっていながらも、庇う事をやめないのが、リィンという人間なのだ。

「・・・さっさと戻るぞ」
「ええ?でもまだ傷は・・・」
「構わん。医務室にでも放り込んで、ベラトリクス教官の説教でも受けるがいい」
「えっ・・・」

思わず引きつるリィンに、いい気味だとユーシスは目を細めて笑う。
なるほどそれはいい、とラウラもその後に続き、エリオットまでもがそうだよねと頷くものだから、リィンは渋々三人に続いて歩き始めた。

帰る途中、そっと隣に並んだユーシスが、ぽつりと「すまない」と告げるのに、リィンは苦笑を返し。

「ユーシスが、無事で良かった」

その笑顔が、眩しくて、とても儚いとユーシスは感じた。