総士の子供ができたら、私はもう叔母になるのね。
何気なく食堂に落とされた乙姫の一言。一騎特製海賊カレーに舌鼓を打っていた剣司は、危うくカレーを逆流させる大惨事に陥りかけた。
「げっっほ……!なにがなんだって!?」
慌てて胃に水を流し込んで息を整える。隣で同じくカレーを食していた甲洋が背中を摩り、乙姫に問うような視線を送った。
小麦粉と砂糖、チョコレートチップを混ぜたシンプルな食後のデザートと珈琲を完食し、乙姫は二人に微笑む。
「まだ十五になったばかりなのにもう叔母さんなんて、ちょっと複雑だなって思って」
「それは……ま、そうかもね」
「総士と一騎の子供は可愛いに違いないけれど、もうちょっと待ってくれたら私の叔母としての威厳が上がると思うの」
「ほう……」
「そうね。あと三年は待ってもらいたいかなぁ。その方が、一騎も子供を育てる前に色々と経験できて良いでしょう?」
「経験」
経験を言葉通りの意味で捉えるべきか、それとも裏の意味を邪推すべきか。二択になっている時点で純粋さを失ってしまった大人二人は、揃って腕を組み唸った。
あの寵愛っぷりじゃすぐできそうだけど、とは言わないでおく。
「そうと決まれば海神様にもお願いしなきゃ!」
おいおい神様にお願いすることなのか、という剣司のツッコミは発されることない。
両手を机について立ち上がりかけた彼女は勇んで出ていくのかと思ったが、突然、あ、と声を上げた。
「でも、それで遅くなっちゃったらなぁ……」
悩ましいと眉を寄せて座りなおす。真剣に悩んでいる手前吹き出すのは失礼なので、二人は内心で苦笑した。
なんだかんだで、この子も二人の子供を待ち侘びているのである。